れっつ☆こすぷれ
都内某所。 その白いビルの中には冷房を打ち消すような熱気が立ち込めていた。
中に集まったのは沢山の女性達。
その正体は「23区計画」に携わる『組織』に属する、同好会『エターナルヘヴン』のメンバーである。 「居合番長、来ました!」 「OK、準備始めて!」 『ハイ!!』 彼女達の目的はただ一つ。
れっつ☆こすぷれ
撮影スタジオと化した集会室に『彼』が来た。
「おはようございます」
「桐雨君!今日は付き合ってくれてありがとう!」
「いえ。・・・本当に私でいいのですか?」
「もちろん!桐雨君が良かったの」
彼女達の元に訪れたのは、和装姿の居合番長こと桐雨刀也。
彼に駆け寄ってきたのは弓山香奈子(ゆみやまかなこ)。企画の発案者で今日一日を引っ張っていくリーダーだ。
彼にコスプレをさせて写真を撮る。
それが今日集まった彼女達の目的であった。
「君が受けてくれて良かった!着替えはあの部屋だから」
「・・・相変わらず気合いが入ってますね弓山さん」
「ライフワークに近いからね。あ、あとこれ今日の予定」
「ありがとうございます」 「そういえば桐雨君って、何で女の子の格好するのに抵抗無いの?」
桐雨の隣をついていた弓山は話し掛けた。
「・・・母が父に隠れて、よく私の所へ可愛い服を着せに来ていました」
「ええっ!?」
「初めは嫌だったのですが、誉められながらやっている内に慣れてしまって」
「へぇ~。・・そうなの」
「でも自分で選んで着る事は無いですけど」
「良かった・・・」
「え?」
「心配してたのよ。渋々、嫌々来ているんじゃないかって」
「そういうものですか・・・?」
「そういうものよ。あ、ごめんね長々と話しちゃって」
「いえ大丈夫です。・・・行ってきます」
「行ってらっしゃい」
弓山に見送られる形で桐雨は『衣裳部屋』と書かれた部屋の扉の奥に消えていった。
しばらくして部屋から出て来た桐雨に弓山は息を呑んだ。
「桐雨君・・・」
「・・変ですか?」
その様子に桐雨も想わず息を呑む。
「ううん、むしろ・・・」
「むしろ?」
「とっても素敵!」
手放しの賞賛に桐雨は肩を下ろした。
「もう『アリス』にしか見えないわ!」
「そうですか?」
桐雨は金色の髪と赤い瞳を持つ少女に変身していた。
白いレースで縁取られた黒のミニケープ、広がった袖と膨らんだスカート部分が印象的な、黒に白のレースとフリルをこれでもかとあしらい、胸にリボンをつけたドレス・ワンピース、これまた黒に白のレースでアクセントを付けられた膝まである靴下に黒のストラップシューズを身に付けて、首を傾げる桐雨の姿は元の肌の白さと相まって、作品に出てくる『彼女』にとてもよく似ていた。
「今まで考えていたかいがあったわ・・・。さ、始めましょう!」
『ハイッ!!!』
「よろしくお願いします」
撮影会が始まった。
そして 「桐雨君、いい!そう!もっとこっちを見て!」 桐雨刀也は 「ニコッと笑って!そして残酷な感じで台に足を!」
「ええっ!?」
「お願い!こうしたいの!」 用意されていた6着の衣装での撮影を 「このセリフを読んでみて?」
「え~と・・『わたしじゃなきゃ駄目なの!』」
「もっと、駄々を捏ねる子供みたいに!」
「『わたしじゃなきゃダメなのぉ!!』」
「ハイ、オッケー!」 メンバーのハイテンションに引き摺られるような形で 「あら?なんでこのヘッドドレスは顎で結んであるの?」
「皆さんが忙しそうだったので、自分で結びました」
「本来コレは頭の後ろで結んだほうがいいのよ。ボンネットは顎でいいけれど。次は気を付けてね」
「はい」
「これでよし・・・っと。ね?締め付けられている感じが和らいだでしょう?」
「はい。ありがとうございます」 無事に終わらせたのであった! 「桐雨君、一日付き合ってくれたお礼がしたいのだけれど何がいいかな?」
「ええと、そうですね・・・」
「とりあえず謝礼って形で少し出せるけど」
「・・・実は二つほどお願いしたいことがあるのですが」
「私達に叶えられる?」
「そんなに難しいことじゃないので」
桐雨は弓山にそっと『お願い』を耳打ちした。
『お疲れ様でした~~』
「お疲れ様。気を付けて帰るのよー」
外でメンバーを見送った後、弓山は来た時の和装に戻った桐雨と共に夕暮れに染まる町を歩いていた。
「本当にいいの、桐雨君?」
「はい。」
話に上がるのは先程桐雨が耳打ちした二つの『お願い』の片方のことである。
一つは『今日集まった皆と記念写真を撮る事』。これには皆喜んで集まったのですぐに終わった。
もう一つは
「まさか私が、人にお菓子をお薦めする側になるとは思わなかったわ~~」
「楽しみにしてますね」
「・・・あまり期待しすぎないでね」
『母へのお土産を選ぶ事』。このビルの近くに自宅があるという弓山が自ら名乗り出た。
因みに代金は謝礼から払う事に話し合いでなった。
「和菓子の類がいいのよね?」
「そうですね。それなら私も食べられますし」
「じゃあ・・・あそこかな?羊羹が美味しいのよね」
「羊羹ですか?いいですね」
「結構美味しいし、あまり高くないからよく私も実家に帰る時に買うのだけれど、いつも喜んでくれるの」
「いいですねぇ~」
「甘すぎないから日本茶にも合うと思うの」
「・・・それはある意味理想的ですね」
「でしょう?それから―――――」
「確かに―――――」
羊羹から始まった和菓子トークは止まることを知らず、件の和菓子屋での買い物の後、駅で別れるまでと永遠と続くのであった・・・。
数日後。
桐雨邸にはたくさんの土産話と羊羹で一時を過ごす桐雨と彼の母親の幸せそうな姿が見られたそうだ・・・。
おしまい。
user-pic 投稿者:マユミカ
投稿日:2009年6月30日 18:36

user-pic
2009/07/03
22:47
いとうあらたさんからのコメント

マユミカさん、お久しぶりです。
今回は年齢制限及びカップリングのカテゴリを細分化してありますので、
前回より投稿の幅が広がり、投稿しやすくなっていると思います。
投稿ありがとうございました。

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